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3Dマトリックス Research Memo(3):止血材の臨床使用結果は良好、操作性や術野の広さなどに高評価

注目トピックス 日本株

■業績動向

(2)主要パイプラインの動向

○吸収性局所止血材(TDM-621)
止血材に関しては2014年7月以降、欧州の有力医療施設で臨床使用を開始しており、直近で臨床使用件数では累計で100症例以上、医療施設数では50施設程度まで広まっている。臨床使用の結果については良好なようで、止血率は競合品と比較しても遜色のない結果を残しているようだ。また、使用後の医師の所見も、止血効果だけでなく、スリー・ディー・マトリックス<7777>製品の特長である操作性の高さ、術野の広さなどが高評価を得ているようだ。同社では1月以降、PMCF(市販後臨床フォローアップ)制度に基づき、複数の有力施設において臨床の比較試験を実施しており、欧州各国での保険推奨リスト採用に向けた取り組みを進めている段階にある。

その他の地域に関しては、7月にインドネシアで医療機器製品登録申請を行ったほか、9月にシンガポールで登録承認を取得。また、9月に香港、10月にチリといったCEマーキング適用国で臨床使用を開始している。

一方、日本では3月13日付で製造販売承認の申請を一旦取り下げ、新たに臨床試験を実施したうえで、再度承認申請を行うことを発表した。PMDAと有効性評価の科学的妥当性について協議を行う中で、承認を取得するためには止血材の有効性について、「精度の高い検証」が必要との結論に至ったためとしている。

解かりにくい表現となっているが、止血効果がないと判断されたわけではなく、止血効果を客観的に判断するデータが不足していると思われる。「精度の高い検証」が必要ということで、症例数が不足しているのではないかという見方もできるが、そうであれば追加試験を実施するだけで良く、今回のように申請を取り下げる必要性はない。

治験において客観的データを取る方法として、医薬品であればプラセボ(偽薬)との比較を行うのが一般的だ。一方、止血材の場合はその有効性(止血したかどうか)の判断基準は、担当医師の主観となるため、全てにおいて客観的データを必要とすることは難しいが、比較試験を実施するなどの何らかの客観的判断要素を取り入れる方法が考えられる。今回、同社では単独試験による治験を行っており、これが客観的データの取得という点において、PMDAとの意見の食い違いにつながった可能性があると弊社ではみている。

また、米国においては治験計画を2013年2月に申請して以降、許可が下りるまで相当の時間がかかっている。期初段階では2015年4月期中の治験開始を目指していたものの、新しく制定されたガイドラインであるRFD(医療機器として開発する妥当性)に時間を要したが、詳細なプロトコル設定についてFDAとの協議を進めている様子。治験開始は2015年夏以降となる見通しだ。プロトコル設定に関しては時間をかけてでも事前に懸案事項を確認・対応しておきたいとの意向があり、これが協議に時間を要している理由と考えられる。

○粘膜隆起材(TDM-641)
外科的内視鏡手術で用いられる粘膜隆起材に関しては、2014年12月より国内での治験を開始したが、2015年2月に一時中断を発表している。治験開始から1ヶ月強で数十例を実施した模様。その中で当初想定していた優位性に対して再検討する必要があったためだ。

具体的には、粘膜隆起材を注入後の隆起の高さや電気メスでの切除の容易さなどについて、最適化を図ったうえで、治験を再開する方針としている。最適化するための調整期間としては数ヶ月程度かかるとみており、その後、PMDAと協議の上で治験を再開する見通しだ。治験の症例数は260症例のため、再開後、半年程度で治験を完了できるものと思われる。

○歯槽骨再建材(TDM-711)
米国での上市を目指している歯槽骨再建材に関しては、第1段階の治験結果をFDAに報告し、了承を得て第2段階目の治験を5月〜6月を目途に開始する予定となっている。治験の症例数は前回と同様15症例となり、経過観察も含めて1年程度かかる見通し。また、提携先候補企業との契約交渉について、従来は治験開始と同時に締結を行いたいとしていたが、今回は契約締結の時期に関しては軌道修正している。候補先企業は従来と同じだが、契約内容が販売許諾権契約に開発権も含めた広範なものとなる可能性があり、交渉の幅を拡大していること、また、治験費用もさほど掛からないことなどが理由としている。

○創傷治癒材(TDM-511)
米国での上市を目指していた創傷治癒材に関しては、2月にFDAより市販前届(510k)の承認を取得し、販売の許認可を得ている。

同製品は、損傷した皮膚組織に再生環境を提供して創傷治癒を促し、再生した部位の審美性に優れる(傷跡が残りにくい)といった特徴を持っている。また、非動物及び非植物性のため、アレルギー及び皮膚刺激性のリスクのある防腐剤も含んでおらず、安全性の高い製品として今後の成長が期待されている。

用途としては、表皮から真皮層までの皮膚創傷の治癒材として医療施設のほか、OTC(一般用医薬品)としての販売も可能となる。ただ、まずはOTCではなく、整形外科など同製品の需要が高いと思われる医療施設への販売を進めていくことになりそうだ。このため、現在は販売提携先企業の探索を行っている段階にある。また、将来的には抗がん剤を混合した皮膚がんへの応用にも適用拡大することを計画しており、医薬品メーカーとの提携も進めていきたい考えだ。

○siRNA核酸医薬用DDS(TDM-812)
国立がん研究センターとの共同プロジェクト「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」における医師主導型の第1相治験が2015年3月より実施されている。同治験では「がん幹細胞」に特異的に発現するRPN2遺伝子をターゲットとし、その発現を抑制する核酸医薬と、同社の自己組織化ペプチドA6K(TDM-812)をキャリアとするDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を組み合わせた製剤の安全性評価を行う。症例数は30症例を目標に、経過観察を含めて2017年9月までを予定している。

医師主導型治験のため、同社はTDM-812の提供を行うのみだが、治験結果が良ければ、今後は企業主導型の第2相治験への移行や、大手製薬企業へライセンスアウトする可能性も出てくるだけに、その結果が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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