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トーセイ Research Memo(11):2020年11月期に売上高1,000億円を目指す

注目トピックス 日本株
■中長期展望

(1)既存事業を拡大しながら周辺事業領域への進出を模索

トーセイ<8923>の2015年11月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画「Advancing Together2017」では企業規模の拡大を志向し、基本方針を『既存事業の拡大と周辺事業領域の検討』としている。重点戦略は下図のように3つから成る。

(2)積極仕入れによるバランスシート拡大が成長の基本

成長の基本は積極仕入れ継続によるバランスシートの拡大。これにより成長ドライバーとする3事業業のうち不動産流動化、不動産開発、安定3事業のうち不動産賃貸の拡大を図る。2015年11月期末の自己資本比率は38.9%、ネットD/Eレシオは0.83倍と良好なデットの調達環境からすると財務レバレッジを高める余地が大きく、2020年11月期末に資産規模を1,785億円(2015年11月期末比92%増)まで拡大する計画。計画ではエクイティファイナンスを見込んでいないが、それでも2020年11月期末の自己資本比率の予想は33.0%であり、財務健全性の点で問題はない。

同社では保有物件を主に棚卸資産としており、投資不動産・有形固定資産は2015年11月期末で221億円と少ないが、長期に安定した賃貸キャッシュフローが得られそうな物件については今後、投資不動産としても取得していく方針で、2020年11月期末には495億円を見込んでいる。

成長ドライバーで安定事業でもあるノンアセットの不動産ファンド・コンサルティング事業では、トーセイ・リート投資法人が2014年11月の上場時の資産規模174億円からスタートし、中長期的には1,000億円の資産規模を目指している。私募ファンドでもブラックストーンから2件の大口のAMを受託し、プレゼンスが向上しているのは明るい材料。

拡大路線ながら事業の安定性向上も重視しており、資産拡大に伴う賃料収入の増加に加え、AUM拡大によるノンアセットのフィー収入の増加などにより、2020年11月期には安定3事業の売上総利益を全体の売上総利益(物件販売経費を控除したベース)の50%まで高めたいとしている(2015年11月期末47%、2016年11月期末予想41%)。また、安定3事業の売上総利益で物件販売経費を除く販管費と金利をカバーしたいとしている(この点については現状でも概ねカバーできている)。

(3)周辺事業領域ではホテル事業を開始

周辺事業領域への進出で現在、目玉になっているのはホテル事業。2016年2月に企画・運営等を行う100%子会社のトーセイ・ホテル・マネジメント(株)を設立し、基本的に自社でオペレーションを行う。既に第1号案件として千代田区内神田に開発用地を取得済み。今春着工、2017年秋のオープンを目指している。インバウンド需要も見込めるビジネスホテルとなる予定で想定部屋数は111室。

今後も開発用地の取得を進めるだけでなく、中古ビルのホテルへのコンバージョンや、第三者が保有するホテルの運営を受託することも検討している。従って、ホテル事業は、不動産開発、不動産賃貸、不動産流動化、不動産管理に関係してくる。

(4)2020年11月期に連結売上高1,000億円を目指す

中計では、最終年度の2017年11月期の売上高や利益の計数目標を公表してはいないが、オリンピックイヤーの2020年11月期の連結売上高目標として1,000億円を掲げている。2016年11月期の会社予想連結売上高552億円からのCAGR(年平均成長率)は16%となる。

この時の利益目標は明示されていないが、2020年11月期末の資本を590億円と予想しており(2016年11月期末予想の資本398億円からのCAGRは約10%)、配当性向を20%とすると2020年11月期の営業利益は100億円程度を想定していると推測される。

(5)日銀のマイナス金利導入は不動産投資市場には基本的にプラスだろう

1月29日に決定した日銀のマイナス金利導入は基本的には不動産投資市場にプラスだろう。不動産投資市場の鍵を握るのは金融機関の不動産融資姿勢。2015年末に金融庁が地銀などの不動産融資の監視を強化するとの一部報道があるなど、金融機関の不動産融資姿勢がやや慎重になりそうな気配があったところに、マイナス金利が導入されたため金融機関はさらに不動産融資に積極的にならざるをえなくなったと考えられる。

マイナス金利導入により、キャップレートの構成要素であるリスクフリーレート(長期金利)がほぼゼロになったことも不動産投資市場にはプラス要因である。ただし、キャップレートが一段と低下するかは現時点では不透明。年初からの世界的な株安、中国や米国の景気に対する懸念の高まり、行き過ぎた原油安、円高などにより投資家のセンチメントが悪化し、もう一つの構成要素であるリスクプレミアムが上昇していると考えられるためである。

世界経済の減速を受け企業業績が悪化した場合のオフィスなどの賃料への影響が懸念されるところだが、まだリーマンショック後の急落からようやく反転上昇し始めたところであり、引続き緩やかながら改善傾向が続きそうな情勢である。

一段と円高が進んだ場合、海外投資家が売り手に回る可能性はあるだろうが、REITをはじめ不動産価格が下がれば買いたいと待ち構えている投資家は数多く存在するとみられ、不動産価格がピークアウトしたとしても大幅な下落はないだろう。

もともと同社はバリューアップによるNOI向上により売却益を獲得するビジネスモデルであり、多少不動産市況が悪化(キャップレートが上昇)しても事業拡大に大きな支障にはならないだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 堀部 吉胤)



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