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プレサンス Research Memo(3):不動産投資市場における一連の不祥事の後においても同社の販売は好調

注目トピックス 日本株
■市場動向

1. 個人向け不動産投資市場における不祥事の影響
今年は「個人向け不動産投資」関連で複数の不祥事が発生し、市場全体への懐疑の目が向けられた。具体例としては、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する(株)スマートデイズ(東京都中央区)が5月に破綻し、一連の取引にスルガ銀行<8358>が不適切な融資を行っていた問題や、TATERU<1435>が顧客(個人投資家)の預金残高を改ざんした問題などがある。プレサンスコーポレーション<3254>のワンルームマンション事業も個人向けの不動産投資という点では類似しているかのように受け取られがちだが、購入者(個人)に融資を行う金融機関や対象物件の価値は大きく異なる。以下、より詳細に一連の問題を検討したい。

2. 金融機関:地銀系vs.ノンバンク系
今年、不祥事(審査書類の改ざん等)が発覚したのはスルガ銀行などの主に地銀が融資する郊外型アパート等の1棟物への不動産投資である。TATERUの問題案件に関わっていたのは主に(株)西京銀行(本社山口県周南市)と言われる。地銀の投資用不動産への融資は意外と歴史が浅く、低金利下で融資先開拓の必要性に迫られた金融機関が多い。そのため、融資データの蓄積に限界があり、審査基準の妥当性にもばらつきが出やすい。不祥事発覚後は審査基準・融資条件が厳しくなっている金融機関が多く、最近のアパートローン新規融資額※1は減少傾向にある。一方で、同社の区分所有のワンルームマンション事業ではノンバンク系(オリックス銀行※2、ジャックス<8584>、クレディセゾン<8253>)が融資を担当する。オリックス銀行、ジャックスは、1970年代から個人向けの不動産投資ローンを扱っており、膨大な融資データが蓄積しているため、審査基準の的確性も高い。一連の不祥事を経ても審査基準・融資条件に変更はない。むしろ、新商品(45年ローン、物件価格の105%融資など)による積極的な融資姿勢が目立つ。

※1 全国銀行協会、2017年6月末〜10月末に融資残高が719億円増加したのに対し、2018年6月末〜10月末は203億円減少している。
※2 オリックス<8591>は傘下にオリックス銀行を持つが、ワンルームマンション投資への融資を長年行ってきた経緯を考慮して本稿ではノンバンク系に分類した。


3. 不動産会社:新興企業vs.業歴のある企業
不祥事が発生した企業の特徴は“新興企業”であるという点である。破綻したスマートデイズは2012年創業、TATERUの前身である(株)インベスターズクラウドは2006年創業であり、いずれも若い会社である。若い会社がすべてそうではないが、コンプライアンス体制の整備や従業員教育の徹底にほころびが出やすい。同社においては、20年以上の社歴の中でコンプライアンスの水準を高めてきており、営業部門から独利した部署が金融機関との対応を行うなどの業務プロセスにより、不正防止のためのチェック体制は当たり前となっている。

4. 立地と物件:地方や郊外のアパートvs.都市部のマンション
不祥事が発覚したのは、主に地方や郊外の賃貸アパート(シェアハウス含む)向けの融資であった。この背景には地方や郊外における人口減少があり、その結果として入居率の低迷がある。本来、入居率が低下すると賃貸物件の採算が取りにくくなるため融資基準は厳しくなる。無理をして貸し出そうとするなかで不祥事が発生するからくりだ。一方で、都市部のマンションの入居率は高く安定している。少子高齢化が進むなかで、便利な都市部への人口流入が続いていることが背景にある。同社のワンルームマンションは、都心の主要駅より徒歩5分圏内に集中している。その結果、同社が管理する賃貸マンション(同社が建設・販売した物件がほとんど)の入居率は、関西圏・東海・中京圏ともに97から98%前後で安定して推移している。

このように、不動産投資市場は、物件の立地が地方・郊外か都市部か、一棟物のアパートか区分所有マンションかなどによって大きな違いがあり、市場を一括りに評価できない。実際に、一連の不祥事の後においても同社のワンルームマンションの販売は好調である。また、金融機関ならびに顧客(個人の不動産投資家)の動向にも違いがある。金融機関は不動産事業者の審査・選別をすすめる傾向が見受けられる。個人の不動産投資に対する関心・意欲は不祥事発覚後も変わらないが、不動産業者への不信感が高まる中で、業者を厳しく選別する機運は高まっている。同社は、都市型ワンルームマンションの市場リーダーで、その商品力、安心感(信頼)、知名度(ブランド)は群を抜いており、金融機関からも不動産投資家からも選ばれるポジションに位置している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)



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