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リネットジャパン Research Memo(10):3つの事業を柱とした収益構造の転換と成長加速を目指す

注目トピックス 日本株
■中長期的な成長戦略

リネットジャパングループ<3556>の中長期的な成長軸は、「リユース事業」における持続的な成長(シェアの拡大)、「小型家電リサイクル事業」の更なる拡大(新たな市場の創造)、「海外事業」での社会課題解決に向けた取り組み(事業機会の獲得)により、収益構造の転換と成長加速を図るものであり、その方向性に大きな変更はない。「収益」と「社会性」の両立により、持続的な成長を目指している。主要事業における中長期戦略は以下のとおりである。

(1) リユース事業
中古書籍・メディア市場全体は横ばいで推移しているものの、そのうちネットリユース市場は拡大しており、とりわけ今回のコロナ禍に伴う「巣ごもり需要」がリアル店舗からネットへのシフトに拍車をかけている。同社では、ネットリユース市場は、現在の500億円から2025年を目途に1,000億円規模の市場に拡大すると推定しており、同社のシェアを現在の8%から10%に引き上げることで、2025年の営業収益100億円、営業利益10億円を目指す計画である。すなわち、急拡大するネットリユース市場において、積極的な広告展開や「巣ごもり需要」をきっかけとした潜在的な顧客の掘り起こし、商品センターの拡充により、市場の伸びを上回る成長を実現する戦略を描いている。

(2) 小型家電リサイクル事業
これまでの施策が実を結び、本格的な成長軌道に乗ってきた「小型家電リサイクル事業」であるが、拡大の余地はまだまだ大きい。また、2020年5月には、過去最高の回収申込件数を記録し、現状のリサイクルセンターはフル稼働の状況にあることから、更なる需要増に対応すべく、新センターの拡張も計画している。同社は、2023年9月期には業務用PCの回収本格化により、PC回収のトップランナーに上り詰めるとともに、2025年9月期には、メーカー・小売業者との協業の本格化により、「都市鉱山」の回収インフラとして、営業収益40億円、経常利益10億円を目指している。さらには、パソコン解体現場での障がい者の雇用促進を図ることで、障がい者雇用問題や人手不足問題の解決に貢献する活動にも取り組む。

(3) マイクロファイナンス事業
安定的な収益が期待でき、かつ社会性の高いビジネスとして、更なる発展を図っていく。具体的には、コアバンキングシステムの導入※による生産性の向上や、ソラミツとの合弁会社を通じた世界初の中央銀行デジタル通貨である「バコン」との連携を模索するなど、様々な可能性を探りながら、融資残高も年平均40%を超える伸び率で拡大していく戦略である。

※インドのNELTOと共同で新しいコアバンキングシステムの導入の最終段階にある。


(4) 人材送出し事業
コロナ禍の影響により、事業の進捗に遅れが生じたものの、日本国内での人手不足が深刻化するなかで、カンボジアでの「人材送出し事業」を早急に軌道に乗せる方針である。すなわち、日本とカンボジアの架け橋になり、日本の人手不足問題をカンボジアが期待する就労支援で解決する役割を担いながら、同社の成長を実現する戦略と言える。今後は、送出し人数の拡大に向けて「対象職種」の拡大、「展開国」の拡大にも取り組む方針である。「対象職種」については、これまでの自動車整備士に加え、惣菜工場等の「食品加工」や「外食」「宿泊」「介護」等を想定している。また、「展開国」の拡大については、インドネシアやミャンマーへの展開に向けて具体的に動き出している。特に、自動車整備士と同様、日本での需要が高い介護人材に注力していく。

弊社でも、今回のコロナ禍の影響により、事業ごとの成長戦略の進捗にばらつきが生じたものの、中長期的な方向性に大きな変更はないものとみている。特に、足元ではコロナ禍の影響を受けているものの、高い経済成長が期待でき、同社独自のネットワークやノウハウに優位性があるカンボジアでの「海外事業」が、同社の中長期的な成長の軸となる見方に変化はない。また、「都市鉱山」として潜在市場が大きい上、参入障壁が高く、競合のない事業モデルである「小型家電リサイクル事業」についても、社会的な関心が高まっているリサイクルプログラムの支援や知的障がい者雇用の創出など、同社独自の取り組みにより成長の余地は大きい。高収益モデルである「小型家電リサイクル事業」が成長軌道に乗ってくれば、同社の収益性が一気に引き上がる可能性がある。まずは当面の目標である経常利益10 億円の達成に向けて、いかにベース利益を積み上げていくのかが重要なテーマと言えるだろう。また、中長期目線では、リユースやリサイクルによる資源の再利用を始め、マイクロファイナンス事業や人材送出し事業、障がい者雇用の創出など、社会課題解決をいかにビジネスに組み込み、成長につなげていくのかに注目している。特に、IT活用を含めたイノベーション実現による同社ならではの価値創造や社会貢献の形に期待したい。


■株主還元

当面は配当見送りとなる可能性が高い。
会員基盤の増強を目的とした株主優待制度を導入
同社は、成長加速に向けた投資フェーズにあることから配当の実績はなく、2021年9月期についても無配を予定している。弊社でも、成長分野への投資や「海外事業」の一部のリストラクチャリングを優先すべき段階にあることから、しばらくは配当という形での株主還元は見送られる可能性が高いとみている。

なお、同社は株主との関係づくりと会員基盤の増強を目的とした株主優待制度を導入している。1単元(100株)の保有で、半期で最大11,000円分(査定金額UP10,000円+お買物券1,000円)を贈呈する内容(継続保有期間2年以上でさらに充実)となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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