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平和RE Research Memo(4):コロナ禍の影響は限定的で、分配金は10期連続でスポンサー変更後の最高値を更新

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 成長の軌跡
平和不動産リート投資法人<8966>は2009年9月に平和不動産が単独スポンサーとなり、2019年11月期で10周年を迎えた。その間、2011年5月期までの「成長基盤の再構築」、2011年11月期から2013年5月期までの「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からは「安定成長軌道」の段階にあると弊社では定義付ける。すなわち現在は、安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指している。この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2020年11月期には物件数107件、資産規模1,780億円、分配金2,680円/口へと大きな成長を遂げている。また、2021年5月期には中期目標の分配金2,750円/口を達成する見通しであることから、今後は新たな目標を掲げて、更なる成長を続ける見通しだ。

2. 2020年11月期の業績概要
2020年11月期における国内経済は、コロナ禍及びそれに伴う緊急事態宣言発出を受け、経済活動が急速に停滞したものの、期の後半は緊急事態宣言解除や「Go Toキャンペーン」により、国内経済活動と消費活動が一部再開した。しかしながら、足下では感染者数が再び増加しており、一部地域では緊急事態宣言が再発令されるなど、予断を許さない状況が続いている。また、米中貿易摩擦やコロナ禍の拡大に伴う経済停滞の長期化等により、海外経済の不透明感も継続している。

このような環境下、2020年11月期(第38期)決算は、営業収益7,072百万円(前期比7.3%増)、営業利益3,677百万円(同14.7%増)、経常利益3,276百万円(同17.5%増)、当期純利益3,275百万円(同17.5%増)の増収増益となった。HF梅田レジデンスTOWERの譲渡益890百万円が増益に大きく貢献した。おおむね2020年7月15日発表の期初予想通りで着地し、コロナ禍による厳しい経営環境を考えると非常に健闘したと評価できよう。なお、REITでは、税引前利益の90%超を分配金として支払う場合には法人税が免除されることから、当期純利益は経常利益とほぼ同水準となっている。

2020年11月期の外部成長戦略としては、HF梅田レジデンスTOWERを売却する一方、HF大濠レジデンスBAYSIDEや東菱ビルディングの取得を行うことで、2021年5月期以降の収益の段階的な向上を見込む。内部成長戦略としては、2020年11月期のポートフォリオ全体の稼働率は96.08%と高水準を維持していることに加え、稼働率の高位安定に伴い、NOI利回り(実質利回りとも言う、(賃貸事業収入−賃貸事業費用)(年換算)/期中平均帳簿価額×100で計算)も5.32%と、引き続き高水準を維持している。また、財務運営では、資金調達コストの過去最低水準を更新し、健全な財務体質を堅持している。この結果、実力ベースの収益力を示す、賃貸収益ベースの1口当たり当期純利益(譲渡益等の一時的要因を除く)は、前期比14円増となった。譲渡益の一部を内部留保することで将来の分配金支払原資を拡充する一方、コロナ禍の影響で投資口価格が大きく下落している状況をとらえ、発行済投資口総数の1.5%相当の投資口を取得・消却した。以上から、1口当たり分配金を期初予想の2,650円を上回る2,680円(前期比130円増)とし、10期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。

コロナ禍に対しては、同REITは分散の効いたポートフォリオ(107物件)、潤沢なフリーキャッシュ(94.1億円)、十分な内部留保(53.7億円)、低い鑑定LTV(41.0%)、コミットメントライン(70.0億円)など、不測の事態に備えて十分なリスク耐性を備えている。なお、コロナ禍による影響については、オフィスの賃貸事業利益への影響は軽微にとどまり、オフィスの稼働率は過去の平均水準を上回った。一方、レジデンスは非繁忙期を迎え(レジデンスでは5月期は3月・4月を含む繁忙期となるが、11月期は非繁忙期)、コロナ禍により稼働率は一時低下したものの、インターネット無料化、家具家電の設置、募集条件の緩和などのリーシング施策によって、期末には回復している。

3. 財政状態
2020年11月期末の財政状態は、総資産188,916百万円(前期末比0.3%増)、純資産94,910百万円(同1.1%減)、有利子負債86,167百万円(同1.8%増)であった。平均調達金利は0.776%と過去最低を更新した。また、有利子負債の平均調達年数は6.97年であった。今後も、主要金融機関との良好な関係のもと、比較的金利水準が高い過去の借入金が満期を迎えることで、緩やかな調達コストの低下が見込まれる。長期借入金固定化比率を87.0%として、将来の金利上昇リスクに備えている。また、コロナ禍の影響を考慮し、大手都銀からのコミットメントライン(必要な時に借りられる、銀行からの融資枠)を2020年11月期より70億円に拡大し、不測の事態にも対応できるように、手許流動性を拡充している。

一方、鑑定LTV比率(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は41.0%と良好な低水準を維持している。同REITでは、同比率40〜50%を標準水準として維持し、上限を65%に設定しているが、鑑定評価額の増加に伴って同比率の低下が続いており、借入余力が拡大したことで、より機動的な物件取得が可能になっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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