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最大級の仮想通貨流出事件は、厳しい規制へ進む分岐となるのか【フィスコ・仮想通貨コラム】

仮想通貨コラム
2018年1月26日、東京の仮想通貨取引所「Coincheck」から、仮想通貨「NEM」が盗まれた。同社はハッキング被害にあったと発表、被害額は約540億円にのぼり、仮想通貨の流出・盗難としては史上最大級の金額となった。同日夜、Coincheckは緊急会見を開き、事件を公表した。

この出来事は、各国政府が仮想通貨ブームへの対応を策定しているタイミングで起きたことで、それぞれがより厳しい監視体制へ進むことが予想される。日本の財務省当局者は、同社への立ち入り調査を実施するとし、次回のG20会合では仮想通貨問題が中心議題になる可能性が高いと述べた。

仮想通貨市場にも大きな影響を与え、ビットコインとその他仮想通貨価格は当然のように下落を続けたが、Coincheckが返金を一部保証すると発表したことにより、落ち着きを取り戻している。しかし、仮想通貨取引のセキュリティーへの信頼の失効を懸念する報道や、中央集中型プラットフォームに依存しないP2P取引の方法に投資家の一部が向かうのではないかとの見方も出ている。

例えば、シンガポールのIndorse Pte社の共同設立者David Moskowitz氏は、「この流出事案には仮想通貨への直接的な2つの影響があります。1つは取引所に対する当局のより多くの規制が行われるであろうこと、もう1つはブロックチェーンに(分散型台帳)による取引方法のメリットの認識の広がりです」 と語っていることが報道されている。

「このような大規模なハッキングは、グローバルな仮想通貨コミュニティにとっては今日直面する最大のリスクの1つです」と、香港PwC社のHenri Arslanian氏も発言している。

これまで、米国財務省は仮想通貨による送金を「進化する脅威」と表現し、マネロンやテロ資金供与などの違法行為を防止する策の考案を検討するとしてきた。また、英国のメイ首相は規制を検討すると約束し、韓国は仮想通貨取引を完全に禁止するかどうかについて議論している。

しかし今回の事案を受け、各国の対応にはより強い規制へと変化する可能性もある。「今回の出来事は、仮想通貨取引により厳しいセキュリティー要件を強制実装しようとする当局の政策立案者を後押しすることになるでしょう」とシンガポールのアジアフィンテック協会の会長David Shin氏は述べている。中国では昨年仮想通貨取引所を閉鎖、取引の全面禁止を行っているが、このような厳しい規制が広がることになるのかが注目される。

昨年12月、米国では先物取引所運営大手CMEグループとCboe Global Markets Inc. (シカゴ・オプション取引所)の両社がビットコイン先物取引を行うことを発表し、多くの機関投資家が仮想通貨の売買に加わりビットコインは高騰した。東京はいまや仮想通貨の主要取引場所であり、大量の仮想通貨を預かる取引所も多い。

今回の資金流出は、Coincheckが外部ネットワークから遮断されたオフラインでの資金保管をせず、外部ネットワークに接続されたホットウォレットに顧客資産を置いていたことが原因となった。また、送金時に複数名の確認が必要となるマルチシグネチャという設定も行われていなかった。

1月29日、金融庁はCoincheckに対し、2月13日までに、リスク管理と内部統制をどのように強化するのかといった、事態の根本原因と顧客への対応を概説するように要請した。26万人ともいわれる被害顧客への返金について、Coincheckは自己資金によって顧客への返金を行うとしているが、時期も方法などは未定の状態にある。

今後の顧客対応に注目が集まることはもちろんであるが、今回の事件の原因とそれに対する防止策が共有され、業界全体におけるセキュリティー面のさらなる向上へとつながることが望まれる。



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