宇宙放射線に耐える暗号回路の網羅的な動作保証を実現
[26/03/23]
提供元:共同通信PRワイヤー
提供元:共同通信PRワイヤー
民間宇宙開発で高信頼性と低コストを両立する新理論、NASA国際会議で優秀賞
2026年3月23日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ポイント
■ 宇宙放射線への耐性を上げ、部品点数を抑えた暗号回路の設計と検証を統合する新理論基盤を確立
■ 放射線対策等で複雑化した回路でも、入力できる全ての値に対する正しい動作を世界で初めて数学的に保証
■ 機器の信頼性向上とコスト削減に直結する本成果はNASA主催の国際会議NFM2025で優秀賞を受賞
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)サイバーセキュリティ研究所は、宇宙通信の安全性を支える暗号回路について、設計と検証を統合する新たな理論基盤を確立しました。
宇宙機に搭載する暗号回路の設計では、宇宙放射線による誤動作を防止するために放射線耐性を上げ、宇宙機の電力やコストの制限に合わせて部品点数を減らす工夫が求められます。しかし、このような工夫を凝らすほど回路構造は複雑化し、入力できる全ての値(全入力)に対する網羅的な動作保証が困難になるという課題がありました。本理論基盤の適用により、放射線耐性を備え、部品点数を抑えた暗号回路を設計し、全入力2の256乗通り(約10の77乗通り)に対する正しい動作を世界で初めて数学的に保証しました。動作保証に要した時間は一般的な計算機で約17時間です。これにより、機器の信頼性向上と電力とコストの削減が可能になり、NewSpaceと呼ばれる民間主導の宇宙開発の進展に貢献します。
なお、本成果は、NASA主催の国際会議「NASA Formal Methods 2025」においてHonorable Mention(優秀賞)を受賞しました。
背景
人工衛星が学術・商用目的で多数打ち上げられるようになり、平成30年11月15日に「人工衛星の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」が施行されました。本法律に基づく基準等に関するガイドラインにおいて、人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定や飛行許可に当たり、重要なシステム等に関する信号の送受信については、妨害や乗っ取りの被害にあわないよう、適切な暗号化等の措置が求められています。
NICTではこれまでに、宇宙通信の安全性を支える技術として、宇宙機の乗っ取りを防ぎ、伝送データを保護する暗号通信方式を研究開発してきました(図1参照)。宇宙通信では高速・大容量化も求められることから、暗号処理をハードウェアで実装することが重要となります。ハードウェア実装では、宇宙放射線による誤動作を防止するために放射線耐性を上げ、消費電力・デバイスコスト削減のために必要部品点数を抑える設計上の工夫が必要となり、回路構造は複雑化します。同時に、設計された暗号回路は、全入力に対して正しく動作することが求められますが、高いセキュリティ強度では、全入力は2の256乗通り(約10の77乗通り)に及び、個別に検証することは現実的ではありません。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603175807-O3-UJ9J1CHC】
図1 宇宙通信の安全性を支える研究開発
今回の成果
本研究開発では、暗号回路について設計と検証を統合する新たな理論基盤を確立しました。本理論基盤では、回路の設計と検証を分離せず、設計における工夫そのものを検証に活用できるようにつなぎ、全入力に対する動作の正しさを数学的な性質として形式検証することで、その正しさを理論的に保証しました。本理論基盤の適用により、世界で初めて、高いセキュリティ強度のもとで、放射線耐性を備え、国際標準で広く用いられる構成と比べて回路規模を約70%に抑えつつ、全入力2の256乗通りの動作保証を実現しました。この網羅的な動作保証の形式検証は、一般的な計算機(単一CPUコア)を用いて約17時間で完了しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603175807-O1-15Wfso52】
図2 暗号回路の設計と検証を統合する理論基盤
本成果は、民間宇宙機が担う通信サービスや地球観測、災害監視などの社会基盤サービスにおいて、省電力・低コストの機器でも誤動作や乗っ取りのリスクを抑え、その信頼性向上に貢献します。
なお、本成果は、NASA(アメリカ航空宇宙局)が主催する国際会議 NASA Formal Methods 2025 (NFM2025)において、Honorable Mention(優秀賞)として表彰されました。NFMは、宇宙、航空、ロボット工学及びその他のNASA関連のクリティカルシステムなど、わずかなバグや誤動作が重大な事故やミッション失敗につながる可能性のあるシステムの信頼性を数学的手法で保証する形式手法分野の歴史ある国際会議です。この分野は、宇宙開発をはじめ失敗が許されないシステムの安全性を支える基盤技術として重要視されており、本会議での受賞はその技術的意義が国際的に評価されたことを示しています。
今後の展望
本研究で確立した理論基盤は、宇宙が社会インフラとして広く利用される時代において、安全性と信頼性を数学的に保証する基盤技術として、宇宙通信サービスの安定運用に寄与します。また、宇宙分野に限らず、安全性と信頼性が極めて重要となる分野への応用も期待できます。今後も、数学的保証に基づくセキュリティ技術の確立に向けて、更なる研究開発を推進します。
論文情報
著者: Morioka,S., Obana,S., Yoshida,M.
論文名: Formal Verification of Composite Field Multipliers for Information-Theoretically Secure Radio Communication in Spacecraft Control
掲載誌: NASA Formal Methods (NFM 2025), Lecture Notes in Computer Science, Vol.15682, pp.236-253. Springer, 2025.
DOI: 10.1007/978-3-031-93706-4_14
URL: https://doi.org/10.1007/978-3-031-93706-4_14
関連する過去のプレスリリース
・2021年8月17日 観測ロケットMOMOv1で情報理論的に安全な実用無線通信に成功
https://www.nict.go.jp/press/2021/08/17-1.html
・2019年7月10日 NewSpace時代に向けた通信セキュリティ技術の初期実験に成功
https://www.nict.go.jp/press/2019/07/10-1.html
2026年3月23日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)
ポイント
■ 宇宙放射線への耐性を上げ、部品点数を抑えた暗号回路の設計と検証を統合する新理論基盤を確立
■ 放射線対策等で複雑化した回路でも、入力できる全ての値に対する正しい動作を世界で初めて数学的に保証
■ 機器の信頼性向上とコスト削減に直結する本成果はNASA主催の国際会議NFM2025で優秀賞を受賞
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)サイバーセキュリティ研究所は、宇宙通信の安全性を支える暗号回路について、設計と検証を統合する新たな理論基盤を確立しました。
宇宙機に搭載する暗号回路の設計では、宇宙放射線による誤動作を防止するために放射線耐性を上げ、宇宙機の電力やコストの制限に合わせて部品点数を減らす工夫が求められます。しかし、このような工夫を凝らすほど回路構造は複雑化し、入力できる全ての値(全入力)に対する網羅的な動作保証が困難になるという課題がありました。本理論基盤の適用により、放射線耐性を備え、部品点数を抑えた暗号回路を設計し、全入力2の256乗通り(約10の77乗通り)に対する正しい動作を世界で初めて数学的に保証しました。動作保証に要した時間は一般的な計算機で約17時間です。これにより、機器の信頼性向上と電力とコストの削減が可能になり、NewSpaceと呼ばれる民間主導の宇宙開発の進展に貢献します。
なお、本成果は、NASA主催の国際会議「NASA Formal Methods 2025」においてHonorable Mention(優秀賞)を受賞しました。
背景
人工衛星が学術・商用目的で多数打ち上げられるようになり、平成30年11月15日に「人工衛星の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」が施行されました。本法律に基づく基準等に関するガイドラインにおいて、人工衛星の打上げ用ロケットの型式認定や飛行許可に当たり、重要なシステム等に関する信号の送受信については、妨害や乗っ取りの被害にあわないよう、適切な暗号化等の措置が求められています。
NICTではこれまでに、宇宙通信の安全性を支える技術として、宇宙機の乗っ取りを防ぎ、伝送データを保護する暗号通信方式を研究開発してきました(図1参照)。宇宙通信では高速・大容量化も求められることから、暗号処理をハードウェアで実装することが重要となります。ハードウェア実装では、宇宙放射線による誤動作を防止するために放射線耐性を上げ、消費電力・デバイスコスト削減のために必要部品点数を抑える設計上の工夫が必要となり、回路構造は複雑化します。同時に、設計された暗号回路は、全入力に対して正しく動作することが求められますが、高いセキュリティ強度では、全入力は2の256乗通り(約10の77乗通り)に及び、個別に検証することは現実的ではありません。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603175807-O3-UJ9J1CHC】
図1 宇宙通信の安全性を支える研究開発
今回の成果
本研究開発では、暗号回路について設計と検証を統合する新たな理論基盤を確立しました。本理論基盤では、回路の設計と検証を分離せず、設計における工夫そのものを検証に活用できるようにつなぎ、全入力に対する動作の正しさを数学的な性質として形式検証することで、その正しさを理論的に保証しました。本理論基盤の適用により、世界で初めて、高いセキュリティ強度のもとで、放射線耐性を備え、国際標準で広く用いられる構成と比べて回路規模を約70%に抑えつつ、全入力2の256乗通りの動作保証を実現しました。この網羅的な動作保証の形式検証は、一般的な計算機(単一CPUコア)を用いて約17時間で完了しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603175807-O1-15Wfso52】
図2 暗号回路の設計と検証を統合する理論基盤
本成果は、民間宇宙機が担う通信サービスや地球観測、災害監視などの社会基盤サービスにおいて、省電力・低コストの機器でも誤動作や乗っ取りのリスクを抑え、その信頼性向上に貢献します。
なお、本成果は、NASA(アメリカ航空宇宙局)が主催する国際会議 NASA Formal Methods 2025 (NFM2025)において、Honorable Mention(優秀賞)として表彰されました。NFMは、宇宙、航空、ロボット工学及びその他のNASA関連のクリティカルシステムなど、わずかなバグや誤動作が重大な事故やミッション失敗につながる可能性のあるシステムの信頼性を数学的手法で保証する形式手法分野の歴史ある国際会議です。この分野は、宇宙開発をはじめ失敗が許されないシステムの安全性を支える基盤技術として重要視されており、本会議での受賞はその技術的意義が国際的に評価されたことを示しています。
今後の展望
本研究で確立した理論基盤は、宇宙が社会インフラとして広く利用される時代において、安全性と信頼性を数学的に保証する基盤技術として、宇宙通信サービスの安定運用に寄与します。また、宇宙分野に限らず、安全性と信頼性が極めて重要となる分野への応用も期待できます。今後も、数学的保証に基づくセキュリティ技術の確立に向けて、更なる研究開発を推進します。
論文情報
著者: Morioka,S., Obana,S., Yoshida,M.
論文名: Formal Verification of Composite Field Multipliers for Information-Theoretically Secure Radio Communication in Spacecraft Control
掲載誌: NASA Formal Methods (NFM 2025), Lecture Notes in Computer Science, Vol.15682, pp.236-253. Springer, 2025.
DOI: 10.1007/978-3-031-93706-4_14
URL: https://doi.org/10.1007/978-3-031-93706-4_14
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