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個々の腸内細菌の生き残り戦略が組み合わさることで、機能性物質ポリアミンが産生されていることを発見〜ポリアミンで予防・軽減が期待される疾患(心血管疾患など)への応用が期待される〜

 メイトーブランドの協同乳業株式会社(本社:東京・中央区/社長:尾? 玲)の松本光晴主幹研究員らは、石川県立大学の栗原新准教授、京都大学の東樹宏和准教授、理化学研究所の辨野義己特別招聘研究員らとの共同研究で、腸内ポリアミンが複数の腸内細菌の代謝経路を経由して生合成され、その生合成経路はビフィズス菌等が産生する酸により作動することを明らかにしました。この研究成果は、米国Scienceの姉妹誌「Science Advances」で6月27日(日本時間6月28日午前3時)に公開されました。




【要約】
 腸内細菌の活動により生成される物質(代謝産物)は、ヒトの健康に大きな影響を与えています。腸内細菌は難培養性細菌も含め1,000種以上が確認され、腸管内ではこれらが複雑に相互作用していると考えられます。しかし、その複雑さ故に、特定の代謝産物の生合成・放出メカニズムを解明する研究は殆ど行われていません。
 ポリアミンは、最近の研究で、オートファジー誘導や抗炎症作用を介した動脈硬化等の心血管系疾患の予防作用や寿命延伸作用が明らかになり注目されている物質です。ヒトを含む動物にとって、重要なポリアミン供給源の一つは、腸内細菌の産生するポリアミンです。著者らは、ビフィズス菌LKM512とアルギニンの併用経口投与によって、腸内プトレッシン(ポリアミンの一種で強い機能性を有するスペルミジン等の前駆体)濃度を高め、マウスにおける保健効果を報告してきましたが、その生合成・放出メカニズムについては未解明でした。
 本研究では、ビフィズス菌等の酸生成細菌が産生する酸をトリガーとし、複数の腸内細菌の独立した代謝経路(生き残り戦略)、すなわち、耐酸性機構(酸から身を守るしくみ)とエネルギー産生機構が組み合わさった、プトレッシン放出経路『ハイブリッド・ポリアミン生合成機構』を遺伝子レベルの解析により明らかにしました(下図参照)。

 この知見は、ビフィズス菌等が作る酸の機能として古くからいわれてきた「有害菌の抑制」や「蠕動運動の活性化」とは異なる新規機能の発見を意味します。また、このハイブリッド・ポリアミン生合成機構は、遺伝子および分子レベルで実証されており、不確定因子が無いことから、ヒト応用研究において、腸内ポリアミン濃度コントロール技術が確立され、保健効果が得られる蓋然性が高いと考えられます。

【ハイブリッド・ポリアミン生合成経路の概要図】
[画像: https://prtimes.jp/i/33623/9/resize/d33623-9-415690-0.jpg ]

1. ビフィズス菌等の酸生成細菌が産生した酢酸・乳酸等で、腸内環境が酸性化する(pH低下)。この酸性化が本機構のトリガーとなる。
2.酸性環境で生き残るためアルギニンを利用した耐酸性機構を保有する腸内細菌(大腸菌等)は、この機構を作動させ菌体内pHを中性に保つ。その際、環境中のアルギニンを取り込み、副産物として菌体外にアグマチンを放出する。
3.アグマチンを利用したATP(エネルギー)産生機構を保有する腸内細菌(エンテロコッカス・フェカリス等)は、放出されたアグマチンを取り込み、この機構を作動させてATPを産生する。
4.その際、アグマチンを取り込み、副産物としてプトレッシン(ポリアミンの一種)が菌体外に放出され、腸管内ポリアミン濃度が上昇する。
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