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『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ

三井住友DSアセットマネジメント株式会社(代表取締役社長 兼 CEO:猿田隆)は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行しております。このたび、マーケットレポート「『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ」を2021年11月24日に発行いたしましたので、お知らせいたします。




<今日のキーワード>
中国大手不動産企業である『中国恒大』の経営危機が顕在化してからおよそ2カ月が経ちました。これまでのところ、同社の社債の利払いや償還は行われてはいるものの支払いは遅れており、債務不履行となる可能性があります。しかし、過去に中国で経営危機に陥った企業は政府主導の資産売却によって徐々に再編されるケースが多く、今回も経済や金融システムに与える影響は限定的と考えています。

【ポイント1】『中国恒大』の債務は不履行となる可能性
■9月ごろから、中国の大手不動産企業である『中国恒大』(チャイナ・エバーグランデ)の債務が不履行に陥るとの懸念が高まり、同社の株価や社債価格が急落しました。同社は好調な中国の不動産市場を背景に債務を膨らませ、電気自動車開発や病院経営、プロサッカーチーム運営など事業拡大にも積極的でした。その拡張的な方針も原因となり経営危機に陥っています。
■『中国恒大』は9月下旬以降、社債の利払いを遅延させています。最終的には一カ月の猶予期間の終了間際に支払われているため債務不履行にはまだ陥っていないものの、綱渡りの資金繰りが続いています。
■こうしたことから、大手格付会社のS&Pは、『中国恒大』の債務は不履行に陥る可能性が極めて高いとしています。今後は猶予期間内にも支払いが行われず、『中国恒大』の社債が債務不履行となるケースが出てくる可能性があります。

【ポイント2】『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスへ
■しかし、債務の不履行というだけでは『中国恒大』という事業体がなくなるわけではありません。今後、『中国恒大』はすでに完成した住宅の引き渡しや、中断している開発の再開などで混乱が生じないことを最優先に、資産売却によって秩序ある長い企業再編のプロセスを経るものと思われます。
■中国人民銀行の易綱総裁は10月17日、『中国恒大』の問題が経済や金融システムに及ぼすリスクを当局は封じ込めることができると述べました。また、中国銀行保険監督管理委員会は10月21日、『中国恒大』は個別のケースであり、経済の安定によって裏付けられている中国企業の全体的な信頼性を損ねることはないと主張しました。
■金融当局の一連の発言からは経済や金融システムへの影響は防ぐ方針が確認できます。そのため、債権者である銀行が融資を引き揚げる可能性は低く、清算を伴う倒産が予想外のタイミングで発生する事態には至らないと見ています。
■『中国恒大』は債務の支払いのために資産の売却を進めています。10月には、最終的に話がまとまらなかったものの、傘下の不動産管理会社を別の不動産会社に売却する交渉を進めていました。11月には、傘下のインターネットサービス会社の株を売却しました。また、創業者である許家印氏は香港にある豪邸やプライベートジェット、美術品などを売却しています。同氏の個人資産は一時は日本円で4兆円を超え、昨年は中国5位の富豪とされていました。現時点で同氏の資産は大きく目減りしていると思われますが、当面の資金繰りを支える一助にはなっています。
■参考になるのが、『中国恒大』と同じく積極的な経営方針で知られた海航集団(HNAグループ)です。同社は中堅航空会社を経営していましたが、ドイツ銀行やホテル大手のヒルトンなどに多額の出資を行う投資事業で知られていました。その方針が裏目に出て2019年ごろから経営危機に陥り、同年には最初の債務不履行を起こしました。しかしその後は中国の破産法で定められた手続きのもとで公的管理下に入り、最初の債務不履行から2年たった2021年10月に更生計画案が裁判所の承認を得ています。

【今後の展開】中国の経済や金融システムへの影響は限定的
■今後予想される『中国恒大』の企業再編プロセスが中国の経済や金融システムに及ぼす影響も限定的だと考えています。
■『中国恒大』は、例えば米リーマン・ブラザーズなどと異なり金融機関ではなく、金融仲介や貸し出しによる信用創造を行っているわけではないため、経済への直接的な影響は限定されます。
■『中国恒大』向けの貸し出しの債務不履行が金融機関に与える影響も限定的と見ています。2021年6月時点の財務諸表によると同社の債務は約2兆元(日本円でおよそ35兆円)ですが、そのうち住宅の受け渡しのための前受け金や開発のための未払い費用がおよそ3分の2で、金融機関からの借り入れは社債を含めても3分の1ほどです。中国の銀行貸出総額は2021年10月時点で262兆元ですので、管理可能な規模と考えられます。
■中国の不動産市場は高成長を続けており、しばしばバブルとの懸念が指摘されてきました。しかし、中国の新築住宅価格の上昇率は名目GDPを下回っています。不動産市場と同様に、中国全体の名目GDP成長率も非常に高かったことにも留意が必要です。
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■中国の不動産に対する需要が強い中では、『中国恒大』が保有する不動産は同社の顧客や他の体力のある会社に売却され、債務返済に充当されると考えられます。『中国恒大』と同じく積極的な方針で知られた企業の中には経営が危ぶまれている会社もありますが、保守的な経営で知られる大手国有不動産企業の株価はむしろこのところ下げ止まりから持ち直しに転じつつあります。
■結論としては、今後『中国恒大』は秩序ある長い企業再編プロセスに至ると考えられます。その過程で同社が債務不履行に陥る可能性はありますが、その影響は限定され、経済や金融システムに影響する可能性は低いと見ています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

重要な注意事項
・当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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