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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆業界地図劇変の可能性◆

注目トピックス 経済総合

〇大型M&A、技術革新などで業界地図一変も〇

北朝鮮情勢、米中の政治経済展開、ブレグジット交渉など、先行き不透明感の強い割に、比較的安定的な世界経済の拡大が続いている。20日、OECD(経済協力開発機構)は世界経済成長率見通しを今年3.5%、来年3.7%に、6月見通しから小幅引き上げた。21日にはWTO(世界貿易機関)が今年の世界貿易量を4月時点の+2.4%から+3.6%に引き上げた(昨年+1.3%、来年の見通しは+3.2%)。

昨日、イエレン米FRB議長は「物価の伸び鈍化は一時的で、物価上昇率が2%に戻るまで金融政策を維持するのは賢明でない」とし、緩やかな利上げを継続する姿勢を再確認した。背景に、「テーパリングを気にするな」(JPモルガン)との、世界的な金融緩和環境が続くとの見方がある。米、EU、日、英を合わせた中央銀行のバランスシートは向こう3〜4年は拡大した水準に止まり、世界の流動性は18年中は増加見込みにある。おそらく、日銀が拡大を続けている間に、FRBが縮小を進めるパターンが維持される。

経済が安定すると、企業は拡大路線を強める傾向がある。需要見通しが強気に傾き、設備拡大競争などが起こり易い。代表はM&A。例えば、9月1日、世界最大の化学メーカー「ダウ・デュポン」が発足した。今後1年半以内に、農業、素材、特殊製品の3つの子会社を設立し、事業再編を行う。言わば、台風の目として、世界の化学企業のビジネスに影響する。中国では世界最大級の電力会社が誕生(8月29日、石炭最大手の神華集団と国有大手電力の中国国電集団が合併。新会社の企業価値は2800億ドルとされ、仏、伊大手を凌ぐ)。自動車業界では3社への統合構想が伝えられる。欧州では、20日、ドイツ鉄鋼大手ティッセンクルップとインド・タタスチールが欧州鉄鋼事業統合で合意。ドイツ・コメルツ銀行と仏パリパの合併交渉、電力会社再編観測など、国境を越えた動きが活発化。

別の側面では技術革新競争が広がる。AI、IoT、自動運転、電気自動車など、既に広く知れ渡った流れがある。例えば、米GEはAI技術を活用し、蓄電装置と消費地電力をリアルタイムで最適化することで、電力網の大幅な効率化ができ、世界で2000億ドル(22兆円以上)節減できるとしている。カナダでは、原油を圧縮・固形化する「石油ボール」技術が開発された。石油輸送が一変する言われている。量子コンピュータ関連のニュースも増えている。ノーベル賞のシーズンだけに注目され易い。

不都合もある。豪4大銀行はATM利用の手数料(2豪ドル=約180円)を撤廃する。スキャンダルが相次ぎ、政治的圧力の高まりに対応したもの。規制強化の流れもあり、確立されたビジネスモデルにも変更を迫られるケースが増えている。

業界地図一変の思惑は、個別的だが、M&A思惑などを高めることで企業価値の再評価につながり易い。先導してきたアップルなど米ハイテク株が息切れする局面では、それらに次ぐ銘柄探しの様相になる可能性があろう。

以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/27号)



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