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【フィスコ・コラム】「ガツン」のクリントン時代が再び来るのか・・・

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「俺ならガツンと言ってやるね」??日本人サラリーマンが居酒屋で同僚に威勢よく話していたものの、ホワイトハウスで当時のビル・クリントン大統領(そっくりさん)に対面すると、黙って胸ポケットから取り出した缶コーヒーを飲むだけ。そんなテレビ・コマーシャルを覚えているでしょうか。1990年代後半、金融機関の倒産など経済の混乱が続いた日本に対し、米国の容赦ない市場開放要求に怒りを感じつつも力関係で何も言えないという現実を揶揄(やゆ)したCMでした。


米大統領選は11月8日の投票日に向け最終コーナーに差しかかっていますが、有力メディアは民主党ヒラリー・クリントン氏支持をすでに打ち出しています。同氏に肩入れした報道によると、共和党トランプ氏に対するリードは拡大しているもようです。この分だと米国政府やメディアが結託したエスタブリッシュメント層の望むように「クリントン政権」がどうやら実現しそうです。10月9日に行われた両候補によるテレビ討論会で夫人を見守るビル・クリントン氏を見て「ああ、またこの時代が来るのか」と暗たんたる気持ちになりました。


「この時代」というのは、1993年から2000年までのビル・クリントン政権のことです。ビル氏は就任後ドル安(円高)政策を進め、衰退ぎみだった米国企業の再生に乗り出します。ドル・円は政権発足当時123円付近でしたが、その年の8月には100円台まで急激な円高が進みます。1年後の1994年1月にはドルはいったん112円台まで戻りましたが、それからさらに1年後の1995年に阪神大震災が発生、同年4月には79.75円の記録的な円高に振れました。2011年の東日本大震災後の円高で抜かれるまで、これが戦後の最高値となりました。


しかし「クリントン政権=円高(ドル安)」ではありません。ここからはドル高(円安)政策にスイッチを切り替え、資本を集めてIT産業を強化します。約3年後の1998年7月にドルは146円付近まで上昇しています。つまり、ドル・円はビル・クリントン政権発足から2年あまりで4割円高に振れた後、今度は3年あまりで8割円安となりました。通貨の価値を決めるのは短期的には需給ですが、長期的には政治力だということがよくわかります。日本が米国から様々な分野で市場開放を迫られた結果、通貨の値動きから社会構造まで一気に変革したのが「この時代」でした。


では、2017年からの「クリントン政権」はどうなるでしょうか。ヒラリー氏は今年2月にメイン州の地方紙に寄稿し「日本は輸出を増やすために円安に誘導している」として、大統領に当選した場合には対抗措置を取る方針を示しています。これは日本の円安政策への単なる批判にとどまらず、ビル・クリントン政権時代同様、通貨政策で主導権を強める宣言と理解できます。まずはドル安(円高)にして米国企業を再生させ、その後体力がついたらドル高にするという基軸通貨国のメリットを最大限に生かす政策が見込まれます。ヒラリー氏は国務長官時代よりもファーストレディ時代、つまりビル・クリントン政権での経験を政策の柱にするのではないでしょうか。日本が「ガツンと言ってやりたい」時代がもうすぐやってきます。

(吉池 威)



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