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【フィスコ・コラム】:天国に一番近い通貨パシフィック・フラン

注目トピックス 市況・概況
南洋諸島のニューカレドニアに出張する知人の話を聞き、東京の寒い空の下で夏の日差しが恋しくなりました。同時に、代表的なトロピカル・カクテルのピニャコラーダを飲む時に使う通貨パシフィック・フランは、一体どのような値動きをしているのか、気になりました。


日本がこれからバブルを迎えるという1980年代に、ニューカレドニアを舞台とした「天国に一番近い島」という映画がありました。この印象的なタイトルは、作家の森村桂(故人)が亡き父親から聞いていた楽園のようなニューカレドニアの旅行記から借りたものです。


映画は、1960年代に出版された原作とは趣が異なるものの、当時の能天気なサーファー文化真っ盛りだった時流に乗ってヒットし、南洋のリゾート旅行ブームのきっかけにもなりました。調べてみると、ニューカレドニアは興味深い歴史があります。映画「天国に??」で描かれているほどお気楽な国ではないようです。


1774年にこの島を発見したイギリス人のクックが、山並みを見てスコットランドの風景に似ていることから、スコットランドのローマ時代の旧名「カレドニア」を名前に使ったといわれています。その後、フランスの植民地となってからは政治犯の流刑先でした。今は楽園ですが昔は「地の果て」と思う人もいたでしょう。


ニッケル産業が盛んなことでもよく知られています。埋蔵量は世界の4分の1とみられており、19世紀末から世界的なニッケル需要とともに大きく発展しました。しかし、1990年代には先住民族の自治権拡大を求める独立運動が激化し、内戦に発展しました。


この結果、1998年に交わされたヌーメア協定では、ニューカレドニアのアイデンティティを維持することが約束されました。将来的にフランスは、外交、国防、司法権、通貨発行以外の権限をニューカレドニア特別共同体に移譲することが決まっています。

2018年11月までに独立の是非を問う住民投票を行う予定で、現在は政治・経済上の過渡期とも言えるでしょう。ニューカレドニアやタヒチなどフランス領南洋諸島で流通している通貨はパシフィック・フランです。本国フランスが1999年にユーロを導入したのに伴い、1ユーロ=119.33パシフィック・フランで固定されています。


仮に、4月、そして5月のフランス大統領選で、欧州連合(EU)離脱を掲げる極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首が選出された場合、パシフィック・フランは復活が見込まれるフランス・フランに固定されるはずなので、ユーロとの固定レートは見直されるかもしれません。


通貨だけでなく、植民地政策そのものも変化する可能性はあるでしょう。遥か遠く離れた本国フランスの都合で、天国に一番近い島が天国から遠ざからないよう見守りたいと思います。

(吉池 威)



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