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ブラジルレアルは大統領選にらみ【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
10月2日のブラジル大統領選まで1カ月あまり。米金融引き締めで通貨レアルには下落圧力がかかるものの、中銀のインフレ抑制姿勢により足元では底堅さが目立ちます。ただ、新政権発足なら財政の悪化が予想されるため、目先は買いづらい展開とみます。


ブラジルレアルは1ドル=5.10レアル台と、2カ月ぶりの水準に戻しています。7月下旬にかけては米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利上げでドル高が進み、その影響で中南米通貨が大きく下落。レアルは一時5.50レアル付近まで下げました。が、8月10日に発表された米7月消費者物価指数(CPI)の伸びが鈍化したほか、FRB当局者から景気に配慮する慎重な意見も聞かれ、ドル買い後退がレアルを支えているようです。


ブラジル中銀は政策金利を2021年3月から今年8月まで12会合連続で引き上げ、それまでの2.00%から約1年半の間に13.75%にまで上昇しました。利上げ幅は最大1.50ptに達することもありました。直近の消費者物価指数は11%台と高水準ながらピークアウトしつつあるため、中銀は引き締め姿勢をやや緩める公算です。これまで、FRBに先行したタカ派姿勢が過度なレアル安を抑制できた要因に挙げられます。


ただ、目先のレアル高は限定的とみられます。その理由は、FRBが9月20-21日に開催する次回連邦公開市場委員会(FOMC)での政策決定の行方が定まらず、ドルの方向感が把握しにくいためです。FEDウォッチでは現時点で利上げ幅に関する市場予想は0.75ptの予想が0.50ptをわずかに上回っているものの、政策決定の重要な判断材料となる8月の雇用統計(9月2日)や消費者物価指数(同13日)次第となりそうです。


もう1つの理由は、10月2日投開票の大統領選です。これまで12人が立候補を届け出ましたが、再選を目指すボルソナロ大統領とルラ元大統領による事実上の一騎打ちとみられています。最近の世論調査によると、ルラ氏の支持率が4割強にのぼり3割強のボルソナロ氏を比較的大きくリードしています。同日に1人も過半数に届かなければ4週間後に上位2候補による決選投票で選出される予定です。


右派のボルソナロ氏はもともと「小さな政府」を目指す政策を推進してきましたが、低所得者向け給付金予算の増額や巨額の景気刺激策など劣勢を跳ね返す動きが目立ちます。一方、左派のルラ氏は労働者や低所得者を保護するプランを打ち出すなど、両候補とも財政支出を拡大する方向です。そして、左派寄りの政権が発足する可能性がリラ買いをちゅうちょさせる要因になっています。


ところで、ブラジルのNGO団体がまとめた報告書によると、昨年の同国での殺人被害者数はこの10年間で最少にとどまりました。治安の悪化を示す統計では常に上位にランクされていますが、非識字率の低下など、若年層による犯罪の主要因である教育水準に関しては改善の兆しがみられるといいます。財政収支はブラジルにとって重要課題ながら、中長期的な投資効果が表れていると言えそうです。
(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。



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