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インフレと通貨安に揺れる中東【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
*09:00JST インフレと通貨安に揺れる中東【フィスコ・コラム】
イスラム組織ハマスとの紛争でイスラエルの通貨シェケルが大きく値を下げ、今後地上戦に突入なら一段安の見通しです。それに呼応しエジプトやイラン、トルコなど周辺国の通貨も急落。インフレが深刻化するなか、戦況悪化なら地域の荒廃は避けられないでしょう。


イスラエルシェケルはハマスの攻撃を受けた10月7日以降に売り優勢の展開となり、3週間で5%超値を切り下げています。イスラエル銀行(中銀)は10月23日の定例会合で政策金利を3会合連続で4.75%に維持することを決定。同中銀は2022年4月から23年5月まで計10回にわたり政策金利を引き上げましたが、連邦準備制度理事会(FRB)に追随し、今年7月以降は金融政策の据え置きにシフトしています。


イスラエルの消費者物価指数(CPI)は沈静化しつつあるものの、直近は前年比+3.8%と、中銀目標レンジの1-3%をなお上回っています。中銀は今回の会合でイスラム組織ハマスとの戦闘激化により個人消費が伸び悩むとの見方から、成長の鈍化を想定しています。足元では景気の浮揚を狙った利下げが期待されたものの、シェケル安がインフレ加速につながりかねないとして、そうした観測を否定しています。


通貨の急落と急激なインフレに見舞われているのはエジプトやトルコも同じです。エジプトのインフレ率は前年比40%に接近し、2000年以降の最高記録を更新中。中銀は政策金利を20%近くに引き上げているものの、物価の上昇に追いついていません。金融支援を受ける国際通貨基金(IMF)との協議の下で進められている改革プログラムも、想定外の事態で難航する可能性が否定できない状況です。


トルコの場合、インフレ率は昨年末にかけて80%台に上昇した後、今年夏には40%を下回る場面もありました。ところが、物価は再び上昇に転じ、足元は60%台に加速。エルドアン大統領の続投により新布陣となった中銀は従来の緩和から引き締めにシフトしたにもかかわらず、やはり物価対策に遅れが生じているもよう。両国がハマスとイスラエルの仲介に積極的なのは自国経済への打撃を回避するためでもあります。


ハマスなどを支援するイランが参戦すれば、中東戦争や原油急騰のリスクが懸念されます。ただ、イランは欧米からの経済制裁を背景にリアルの実勢レートが大きく下げ、インフレに歯止めがかかりません。生活が困窮するなか、2021年に発足したライシ政権への不満を訴えるデモが頻発。経済の低迷は国民を戦争に駆り立てる要因になりますが、現時点では各国の先行き不透明感が戦況の悪化を食い止めている面もありそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。



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