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EU離脱後のポンド【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
*09:00JST EU離脱後のポンド【フィスコ・コラム】
英国の欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票から間もなく10年。以来、短命政権による不安定な政策運営でポンドは低迷し続け、投票前の水準には戻っていません。来週の地方補選の結果によってはスターマー政権の退陣が見込まれ、ポンドへの逆風は厳しさを増しそうです。


2016年6月の国民投票でのEU離脱決定を受け、ポンド・ドル相場は1.50ドル前後から一気に1.30ドル近辺まで急落。その後も離脱交渉を巡る混乱やメイ、ジョンソン両政権下での政治的不透明感から17-19年は停滞と乱高下を繰り返しました。2020年には新型コロナウイルス禍で再び売り圧力が強まり、2022年にはトラス政権による大型減税策への市場不信から一時1.10ドル近辺まで落ち込みました。


短期的に1.40ドル台に持ち直す場面はありましたが、ポンドの買戻しは続きません。24年の総選挙で発足した労働党政権は財政運営の正常化を進め、足元は1.34ドル前後まで回復。ブレグジットによって失った価値の一部は取り戻したものの、国民投票前の1.50ドルには遠く及ばず。この10年間は「主権を取り戻した英国」と「失われた市場の信認」の間で揺れ続けました。


市場の関心は、6月18日に実施されるメーカーフィールド選挙区の補選へ移っています。統一地方選で躍進したリフォームUKも候補を擁立。労働党候補として立候補するバーナム・マンチェスター市長が当選すれば、下院議員資格を得て党首選への出馬が現実味を帯びてきます。その場合、市場はスターマー政権の求心力低下だけでなく、新たな党首選による政治空白を意識し始める可能性があります。


もっとも、政権交代論が浮上する背景には政治要因だけでなく、景気減速への懸念もあります。5月のサービス業PMIは節目の50を下回り、ILO失業率は5.0%へ上昇。賃金上昇率も鈍化しており、個人消費の勢いは後退。一方で、中東情勢の緊迫化を受けて7-9月期の家庭向けエネルギー料金は引き上げられる見通しです。景気減速と生活コスト上昇が同時進行する中、労働党政権への不満が広がりやすい環境となっています。


バーナム氏が補選、その後の党首選で新首相に選出された場合、当面のポンド相場にはマイナス材料となりそうです。市場は新首相の政策そのものよりも、政権運営の継続性を重視するためです。ブレグジット以降の英国政治における短命政権の傾向から、新政権の不透明感が強まれば、英国債とポンドには売り圧力がかかりやすいでしょう。ポンド・ドル相場が国民投票前に戻せないのは、政治への信認低下も強く影響していると言えそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。



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