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伊藤忠エネクス Research Memo(4):ホームライフ事業の収益面での中核はLPガス販売事業

注目トピックス 日本株

■事業部門の詳細

(1)ホームライフ事業

伊藤忠エネクス<8133>のホームライフ事業の中には、LPガス販売事業、都市ガス事業、太陽光発電システム販売、家庭用燃料電池(エネファーム)販売など多種多様であるが、収益面での中核はLPガス販売事業となっている。

LPガス事業

LPガス事業のフローとしては、関連会社のジャパンガスエナジー(株)から100%を仕入れ、子会社を通じて約30万世帯に直接販売するほか、約1,600店の販売店にLPガスを卸売している。同社からのLPガスがカバーする世帯数は直販・卸合計で約100万世帯に及んでいる。

LPガスの市場は比較的地味な印象があるが、事業としては安定した環境にある。LPガスの最大の競合であった都市ガスは、比較的人口密度が高い都市部にある。都市ガスの導管網が整備されていない地域に対しては、ボンベ搬送によるLPガスで対応せざるを得ない。その棲み分けは、ほぼ完了している。エネルギー源での都市ガスに代わるライバルとしてはオール電化があるが、原発停止で電力安定供給に不安があることや、電気料金が高水準にある状況を考えれば、LPガスの需要は当面、安定した状況が続くと考えられる。

LPガスは卸業者や小売店にとって、収益性の面でも比較的安定している。LPガスは輸入が80%を占め、LPガス元売会社から同社を始め全国の卸売業者に供給され、小売業者を経て家庭にデリバリーされる。原料価格変動は原料費調整制度によってある程度吸収され、卸売業者・小売業者は一定のマージンを確保できる仕組みとなっている。LPガス販売業者(小売)は全国に約2万社あるとされているが、小規模業者が多数共存できている背景には、こうしたマージン確保の仕組みの存在がある。

LPガス事業における同社の戦略は明快で、直販(小売)の顧客拡大となる。卸売事業も重要な収益源ではあるが、直販すれば卸売マージンと小売マージンの両方を得られるため、それだけマージンが高くなる。現在は約30万世帯であるが、中小販売店へのM&Aを通じて“面積”を増やすことに注力する方針だ。

同社のLPガス事業は、収益の中核という側面のほかに、成長のエンジンになり得るポテンシャルを秘めていると弊社では考えている。それはLPガス事業が有する100万世帯のネットワークだ。100万世帯もの最終顧客と直接つながっているという状況は容易には作り上げることはできない。このネットワークを活用することで、同社は様々な商材を販売することが可能だ。同社自身もこの100万世帯ネットワークの持つ価値を十分認識して、成長事業に結び付けようと検討中のようだ。詳細は電力・ユーティリティ事業の項で述べるが、同社が強化を図っている電力の直接小売においてもこの100万世帯ネットワークは大いに貢献すると期待される。

都市ガス事業

同社は、大分県中津市で都市ガス事業を運営している。これは2001年3月に同社が都市ガス事業の第1歩として中津市から都市ガス事業の資産及び運営権を取得したことでスタートした事業だ。中津市の事業は設備の減価償却も進み、安定的に黒字が出ている状況で、2013年には同事業を子会社のエコアに移管している。参入当初は、中津市で都市ガス事業のノウハウを蓄積し、順次事業を拡大させる計画だったが、これまでのところは中津市だけにとどまっている。制約条件の多さや公共事業としての性格から、早期収益化が難しい案件が多いとの判断からだ。

例えば人口100万人の大都市であっても都市ガス事業が赤字であるような例も珍しくないことを考えると、弊社では同社の都市ガス事業に慎重なスタンスを妥当な判断だと考えている。将来的には、さらに運営ノウハウを蓄積したうえで、コンセッション契約(資産を保有せず運営権だけを獲得する契約)によって事業を拡大していくことも1つの事業モデルと考えられるが、現時点では都市ガス事業について現状維持という判断のようだ。

スマートエネルギー機器販売事業

同社はLPガス・都市ガス事業に加えて、太陽光発電システム、家庭用燃料電池「エネファーム」、それを組み合わせたダブル発電システムなどの販売事業も行っており、これらを総称してスマートエネルギー機器と呼んでいる。エネファームの販売開始は2009年、太陽光発電は2011年と比較的歴史が浅い事業であり、現状での収益貢献度は限定的とみられる。しかし同社では、これらの機器販売をホームライフ事業の中長期の成長エンジンと位置付けている。2014年度の経営計画においても、重要施策の1つに「エネルギーベストミックス提案型企業の実現」をうたっており、このなかでは太陽光発電やエネファームなどのスマートエネルギー機器の販売は重要な位置を占めていると言える。

弊社では「エネルギーベストミックスの提案」⇒「スマートエネルギー機器の増販」という販売戦略は理に適っていると考えるが、一方で現実の販売ルートの確立も重要であると考えている。最も効果があると期待されるのは大手住宅メーカーとの提携などであるが、この分野は既に機器メーカーと住宅メーカーの関係が確立してしまっているので、なかなか容易ではない。より現実的な選択肢としては、同社自身が現に手掛けている様々な中小住宅メーカーとの連携などが考えられる。同社は川上のエネルギー(電力、ガスなど)自体と川下の機器を、複数のエネルギー源について扱っている稀有な存在であり、その特徴をどのように強みに変えて業容を拡大させるか、注目されるところだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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