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イグニス Research Memo(1):4度の増額修正を伴う大幅な増収により黒字転換を実現

注目トピックス 日本株
イグニス<3689>は、スマートフォン向けネイティブアプリの企画・開発・運営・販売を手掛けている。主に広告収入と課金収入による「無料ネイティブアプリ」と課金収入による「ネイティブソーシャルゲーム」の2つを事業の柱とし、ゲーム及び非ゲームの領域で独自のポジショニングを確立している。過去においては、日常的に利用する高品質なツール系アプリなど、数多くの小規模アプリを量産してきたことが同社の成長をけん引してきた。2015年9月期からは、これまでの小規模アプリ中心から、コミュニティ領域などライフタイムの長い中・大規模アプリ※の開発へ注力することによる収益構造改革に取り組んでいる。転換期に当たるところに、急激な環境変化の影響(小規模アプリの収益化の難易度が上昇)が重なったことから業績が一旦後退する局面を経験したが、順調に立ち上がった「ぼくとドラゴン」(ネイティブソーシャルゲーム)が好調を持続していることに加えて、足元では新たな成長軸も立ち上がってきており、同社は新たな成長ステージを迎えている。

※同社では開発期間に応じて、無料ネイティブアプリを小規模 アプリ(1ヶ月未満)、中規模アプリ(1ヶ月超3ヶ月未満)、大規模アプリ(3ヶ月超)に分類している。

2016年9月期の業績は、売上高が前期比130.9%増の5,585百万円、営業利益が1,474百万円(前期は38百万円の損失)と、4度の増額修正を伴う大幅な増収により黒字転換を実現した。特に、第4四半期会計期間の売上高は過去最高(四半期ベース)を更新しており、業績が一旦後退した前期からのV字回復を果たしたと言える。好調を持続している「ぼくとドラゴン」が年間を通じて業績の伸びをけん引した。一方、中・大規模アプリへのシフトを進めている「無料ネイティブアプリ」はわずかに減収となったものの、第4四半期会計期間だけを取り上げると大きく伸びてきており、いよいよ新たな成長軸が立ち上がってきた。また、損益面でも、増収効果に加えて、本格的なテレビCMを見合わせたことにより、将来に向けた先行費用をこなしながら大幅な損益改善(黒字転換)を達成した。

同社は、2020年9月期までの中期経営計画を公表した。新たな成長軸が立ち上がってきたことから、既存事業を「コミュニティ」「ネイティブゲーム」「メディア」の3つの事業に変更し、それぞれの維持・強化を図る一方、新たに3事業(ライフハック、VR※、もう1つは未定)を順次立ち上げ、2020年には全て収益事業化することを目指している。2020年9月期の目標として、売上高150億円、営業利益60億円を掲げており、新規事業で営業利益の30%を稼ぎ出す構えである。

※Virtual Reality(仮想現実)の略。

中期経営計画の初年度となる2017年9月期の業績予想については、売上高を前期比7.4%増の6,000百万円と見込んでいるが、利益予想の開示は現時点で行っていない。既存事業におけるプロモーションコストや先行投資の規模、そのタイミングなどについて、現時点で合理的な見積りが困難であることが理由と考えられる。ただ、新規事業等への投資は15億円規模を予定しており、利益水準は一旦低下する可能性が高いとみている。また、増収率が比較的緩やかな水準となっているのは、2016年9月期の業績の伸びをけん引した「ぼくとドラゴン」を保守的にみていることや、それ以外による業績寄与についても慎重な見方をしていることが理由と考えられる。また、開発中であるソーシャルゲームの新規タイトルやVR事業についても織り込んでいない。弊社では、「ぼくとドラゴン」については、2016年9月期のような大きな伸びは期待できないものの、高い水準での業績寄与を維持することは可能であるとみている。また、新たな成長軸である「with」※1や「U-NOTE」※2が足元で順調に立ち上がってきたことから、同社の売上高予想は最低ラインと捉えるのが妥当であろう。「ぼくとドラゴン」の持続的成長、「with」及び「U-NOTE」による業績寄与、新規事業の立ち上がりのほか、中長期的な目線から新規事業等への投資15億円の使い道や収益化に向けた道筋にも注目している。

※1人気メンタリストDaigo氏監修の下、心理学・統計学の手法を応用した出会い・婚活サービス。
※2「仕事を楽しく、毎日をかっこ良く。」をコンセプトとしたビジネスパーソン向けメディアサービス。

■Check Point
・第4四半期会計期間の売上高は過去最高
・新たに「ライフハック」「VR」「その他」の3事業を立ち上げる
・新規事業の収益化に期待

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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