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エーバランス Research Memo(5):2020年6月期は事業転換の過渡期、VSUN次第で上振れの可能性も(1)

注目トピックス 日本株
■成長戦略

1. Abalance<3856>の2020年6月期業績見通し
連結業績計画として売上高で前期比20.3%増の7,200百万円、営業利益で同29.3%減の430百万円、経常利益で同27.6%減の410百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同15.5%減の267百万円の達成を目指す。売上高が増収となるにも関わらず減益を見込んでいるのは、ソーラー発電所分譲マージン率の低下や海外事業拡大の先行投資に係る費用増等が要因となっている。

VSUNは持分法適用関連会社のFUJI SOLAR(出資比率34.0%)の子会社との位置付けにあるものの、会社計画にはVSUNの連結子会社化または持分法適用関連会社化の影響は織り込まれていない。仮に連結又は持分法適用の対象となれば、VSUN業績の反映による上振れが生じる模様。なお、VSUNは将来、ベトナム証券取引所への株式上場を目指している。

(1)グリーンエネルギー事業
a)国内市場
我が国の電源構成に占める再生可能エネルギー比率は約17%(2018年)というデータがあり、諸外国に比して低い水準に留まる。2030年のエネルギーミックスではこれを22〜24%に引き上げることを国の政策に掲げている。再生可能エネルギーの比率を高めていく方策には今後も大きな変更はないものと予測され、台風等の災害原因ともされる地球温暖化の防止やCO2削減の方向性にも大きな変更はないものと思われる。CO2を排出しないグリーンエネルギー事業を営む同社には追い風となる。

従前からのソーラー分譲を継続しつつ、売電収入やO&Mサービス等の安定収益の確保を企図したストック型ビジネスは増収基調が続くと見込まれ、採算性の高い案件等を選別のうえ自社保有していく構えだ。
自社保有のソーラー発電所としては、2018年7月にWWBが大分県中津市にあるソーラー発電設備を取得したほか、2019年2月には宮城県角田市で進めているソーラー発電所の建設・運営等を目的に設立した合同会社角田電燃開発への匿名組合出資を実行。資金調達については、角田電燃開発と金融機関との間で融資関連契約を締結、プロジェクトファイナンス※の組成により約52億円を調達した。同発電所の能力は18.3MW、一般家庭の約4,310世帯分の消費電力に相当する規模となる。2019年3月着工、2021年3月売電開始の予定となっている。(初年度売電収入見込みは約7.5億円(FIT価格36円/kWh)を想定)
O&M事業では落雷対策やセキュリティ対策、RPAシステムを通じた異常検知等の保守・設備監視サービスの需要が堅調に推移し、これまで1,000件以上の実績があるストックビジネスとして安定収益源となっている。

※プロジェクトファイナンス:特定事業に対して融資を行い、そこから生み出されるキャッシュフローを返済の原資とし、債権保全のための担保も対象事業の資産に限定するファイナンス手法を指す。


新規事業の風力発電は、北海道南西部において陸上・小型の案件を建設中、最終的には同地区で数十基の開発を進める計画。開発規模は会社未公表のため差し控えるが、風力開発の専門家を新たにリクルートするなど風況調査等の綿密なリスク管理を行ったうえで今後の事業展開を図る方針である。売却するか自社保有するかは、今後の運営状況や収益性を考慮して検討していくことになる。

また、風力発電とソーラー発電を同一拠点に設置するハイブリッド型発電所の開発も今後、検討を進めていく。ソーラー発電は3月から11月が発電量のピーク、風力発電はその他の期間がピークとなるため、ハイブリッド型により、事業者にとっては年間を通じて安定した売電収入が見込めるほか土地の有効活用にもなるため、付加価値の高い案件開発となり得る。そのほかにも、バイオマスや蓄電池の本格事業化についても今後、検討を進めていくとしている。

b)海外市場
アジアの新興国では電力インフラが未整備な地域がまだ多く、2040年までの電力需要増加分は日米欧の総需要に匹敵するとの見方もある。また、原子力発電の建設・維持管理コストの高騰により、再生可能エネルギーの導入を政策的に推進する国が増えており、同社にとっては事業拡大の好機となっている。

なかでも、ソーラー発電所の需要が大きく拡大しているのがベトナムで、2018年には発電容量で前年比30倍増となり、世界第6位のソーラー発電市場に成長している。ベトナム政府が2016年に原子力発電所の建設計画を中止し、再生可能エネルギーの導入ペースを加速していく計画を発表※1、2017年以降に優遇政策※2も導入されたことで、ソーラー発電所の投資機運が一気に高まった。2016年に10MW程度しかなかったソーラー発電能力を2030年には12,000MWの発電能力まで拡大していく計画となっており、金額に換算すると工事費やソーラーパネル等設備機器含めて6千億超の需要が生み出されることになり、2019年以降も新たなメガソーラー発電プロジェクトの計画が目白押しとなっている。

※1 ベトナムの商工省が2016年3月に「改定第7次国家電力マスタープラン」を発表し、2030年時点の発電設備容量に占める再生可能エネルギーの割合を22%と、改定前の6%から大きく上方修正した。
※2 FIT制度を導入し、FIT価格を9.35セント/kWh×20年とし、発電された電力のすべてをベトナム電力会社(EVN)またはEVNが認可した事業者が購入する義務を負うことになった。また、税優遇措置のほか土地使用料やリース料等の減免措置なども導入した。FIT価格については2019年9月に見直し予定。


こうした成長市場を取り込むため、WWBでは現地企業とEPC及びIPP事業の合弁会社を設立し、合弁会社の出資比率に応じて収益を獲得していくほか、自社ブランドまたはVSUN製ソーラーパネルの販売等を拡大していく戦略となっている。

(2) ベトナムでのソーラー発電プロジェクトの動向
ベトナムでのソーラー発電プロジェクトには、Power Thang Long Joint Stock Companyが、ホーチミン近辺に所在する大手鉄骨メーカーの工場(屋根)に1MWのソーラーパネルを設置し、2019年5月より売電を開始、今後も発電能力を増強する予定となっている。また、EGEでは2019年以降、ソーラー発電所の建設を計画している。屋根設置型のソーラーパネルを電力会社の社屋や工場等に設置していく計画となっており、出資比率に応じて利益を収受する。その他、複数プロジェクトが同時進行しており、投資の回収等、公表し得る段階になった時点で事業状況は適時に公表するとしている。

(3) 建機販売事業
建機販売事業は、国内及び東南アジア(ODAプロジェクト等)での販売・レンタルリース等を引き続き推進していく計画となっており、黒字を維持していく方針。本事業は建機の故障等にその稼働が止まってしまうことによるユーザー側のリスク軽減を図ることが重要なビジネスであるため、同社では現地に駐在員を常駐させ適時対応を可能とする体制を構築した。
受注面では現地建設会社以外にも大手ゼネコン等からの引き合いもあるほか、海外工事案件の需要も増加傾向と予測。需要が比較的堅調に推移する一方でサービス体制強化にともなうコスト増をいかに吸収し、セグメント黒字を確保していくかが重要といえる。

(4) IT事業
IT事業は2019年10月1日以降、新会社のAbit株式会社が事業を承継。IoT、RPA、AI等の成長分野へフォーカスすることにより格段の成長を目指すとしており増収を見込んでいる。新会社として発足したことによる同事業の機動性の向上等が今後の業績にどのように反映されるかが注目される一方、慢性的な不足とも言われているIT人材のリソース確保を課題とする。
少子高齢化を社会的背景とした労働人口の逓減にともなうマンパワーの不足はわが国の構造的政策課題となっているため、中長期的にもこの傾向は継続すると考えられ、業務の省力化を企図したIoT・RPA等の分野に強みを持ち、市場ニーズの増加と共に同事業の拡大が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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