メダカの排卵のタイミングは環境で変わる
[26/03/25]
提供元:共同通信PRワイヤー
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〜実験室と野外の比較で見えた繁殖リズム〜
2026年3月25日
大阪公立大学、岐阜大学
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O4-QQh326dg】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O16-Ly8j8S4t】
メダカの排卵のタイミングは環境で変わる 〜実験室と野外の比較で見えた繁殖リズム〜
<発表者>
大阪公立大学大学院理学研究科 近藤 湧生特任助教、小林 龍太郎大学院生(博士前期課程2年)、小林 優也氏(博士奨励研究員)、安房田 智司教授、岐阜大学教育学部 古屋 康則教授
<概要>
本研究グループは、実験室環境と屋外に水槽を設置した野外に近い環境における、メダカの排卵のタイミングを比較しました。各環境において4日間で144匹のメスを調べた結果、野外に近い環境のメダカは、実験室より約3.5時間早く排卵していることが分かりました。
本研究成果は、2026年3月4日に総合科学の国際学術誌「Royal Society Open Science」にオンライン掲載されました。
<ポイント>
実験室環境では、一般的なメダカの飼育条件である人工照明を14時間点灯・10時間消灯、水温を26℃に設定して、メダカを飼育した。野外に近い環境では、メダカの繁殖期初期の5月〜6月に屋外水槽を置いて自然の日照のもとで、実験室環境で用いたものと同じ系統のメダカを飼育した。
各 環境における実験では、オスとメスのペアを水槽に入れ、1時間ごとにメスを取り出し、卵巣を顕微鏡で観察して排卵の有無を確認した。
各環境において4日間で144匹を調べたところ、メスの半数が排卵を完了する時刻は、野外に近い環境では日の出の約4.2時間前、実験室環境では照明点灯の約0.7時間前であった。つまり、野外に近い環境では、実験室より約3.5時間早く排卵していたことが判明した。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O8-RcTs15G2】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O7-07O0FSpA】
図1. 排卵後のメダカの卵
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O9-NR9oYh69】
< 研究の背景>
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O11-v60p8X1E】
図2. 排卵により卵が膜(F)から離れると渦巻き状に密着していた糸(A)がほどける。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O13-RaoO862L】
図3. 二つの飼育条件下(赤:実験室、青:野外に近い環境)における排卵していたメスの割合。野外条件では実験室条件と比較して排卵の開始がより早く、実験室条件では3.5時間の遅れが観察された。上部のバーは明期(白)と暗期(黒)を示す。〇の大きさは匹数を表す。
マウスやメダカなどのモデル生物は、実験動物として研究によく使われています。実験室での研究結果の信頼性を高めるためには、その生物の自然環境における行動や生理機能の理解が重要です。実験室での適切な飼育条件の設定、生態に即した実験計画の立案、そして結果の正確な解釈につながるためです。
メダカは日本人にとって身近な魚です。小型で飼育しやすく毎日のように産卵するため、遺伝学や発生学、行動学、医学など幅広い分野で実験動物として活用されています。これまでメダカ研究の多くは、明るさや温度を調整でき、観察しやすいという利点から実験室で行われてきました。一方、自然の中でメダカがどのように生活しているのかについては、ほとんど調べられていませんでした。
メダカの産卵開始時刻は、お腹に卵をつけたメスが観察された時刻や卵の成長段階から推測され、日の出の前後約1時間と考えられてきました。しかし、本研究グループによるこれまでの研究から、野外ではメダカが深夜から産卵行動を開始していることや、実験室と野外環境では求愛や産卵行動の開始時刻に3〜4時間のずれがあることが明らかになってきました(p.3<過去のプレスリリース>を参照)。過去の研究では、行動の観察によるものでしたが、産卵行動の前には排卵(卵巣の中で成熟した卵が体外に出せる状態になる)というメスの生理的な変化が起こります。しかし、この排卵のタイミングも野外と実験室で変化するのかどうかは、分かっていませんでした。
<研究の内容>
本研究では、実験室環境と屋外に水槽を設置した野外に近い環境の二つの条件で、同じ系統のヒメダカを飼育し、排卵のタイミングを比較しました。実験室環境では、人工照明を14時間点灯・10時間消灯、水温を26℃に設定し、実験室でのメダカの一般的な飼育条件にしました。野外に近い環境では、メダカの繁殖期の初期にあたる5月〜6月に屋外に水槽を設置して、自然日照で飼育し、水温は気温に合わせて変動させました(平均22℃、15℃〜28℃)。
産卵が安定して起こるまで各環境で1ヶ月飼育した後、排卵のタイミングを調べました。実験当日にオスとメスのペアを小型水槽に入れ、1時間ごとにメスを取り出し、卵巣を顕微鏡で観察して排卵の有無を調べました。排卵前の卵は膜に包まれていますが、排卵後は膜から外れ、付着糸がほどけて広がります(図2)。各環境で1時間ごとに3匹ずつ、12時間×4日間で144匹のメスを調べました。その結果、メスの半数が排卵を完了する時間は、野外に近い環境では日の出の約4.2時間前、実験室環境では照明点灯の約0.7時間前でした(図3)。つまり、野外に近い環境のメダカは、実験室より約3.5時間早く排卵していたことになります。
本研究では、両環境で同じ系統のメダカを使用したため、排卵のタイミングのずれの原因は飼育環境の違いによるものと考えられます。実験室の人工照明が突然点灯・消灯するのに対し、自然環境では夜明けや夕暮れの明るさが緩やかに変化すること、水温が自然環境では日々変動することなどが、これらのタイミングのずれの原因と考えられます。
<期待される効果・今後の展開>
本研究により、実験室と野外に近い環境におけるメダカの排卵タイミングの違いを示すことができました。実験動物を用いた研究成果を、実験室の結果のみを基に一般化することの課題を具体化した点に意義があります。また、モデル生物における自然環境での基礎的な生態情報を把握することの重要性を改めて示しました。
今後は、実験室と野外環境で行動や排卵のタイミングにずれを生じさせる要因を特定し、それらがどのように排卵タイミングを制御しているかを明らかにしていく必要があります。また、なぜメダカが野外環境では夜間に排卵をするのかという生態学的意義や、環境によって柔軟に排卵のタイミングが変化する仕組みについても調べていきたいと考えています。
<資金情報>
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:JP25K18549、JP24K09051)、公益財団法人 東京動物園協会 野生生物保全基金、公益財団法人 クリタ水・環境科学振興財団(24H083)、公益財団法人 河川財団 河川基金(E250161)の支援を受けて実施しました。
<掲載誌情報>
【発表雑誌】 Royal Society Open Science
【論文名】 Temporal shifts in ovulation between laboratory and semi-natural environments in the model fish medaka
【著者】 Yuki Kondo, Ryotaro Kobayashi, Yuya Kobayashi, Yasunori Koya, Satoshi Awata
【掲載URL】 https://doi.org/10.1098/rsos.251946
<過去のプレスリリース>
「そっと覗いて観ていたら新事実が判明! 野生のメダカは夜明けではなく深夜に産卵を開始する」https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-16261.html
「24時間観察で判明! 屋外でのメダカの繁殖行動は夜中に始まる」
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-18022.html
「実験室と野外環境におけるメダカの繁殖行動開始に、数時間のズレがあると判明」
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-18906.html
2026年3月25日
大阪公立大学、岐阜大学
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O4-QQh326dg】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O16-Ly8j8S4t】
メダカの排卵のタイミングは環境で変わる 〜実験室と野外の比較で見えた繁殖リズム〜
<発表者>
大阪公立大学大学院理学研究科 近藤 湧生特任助教、小林 龍太郎大学院生(博士前期課程2年)、小林 優也氏(博士奨励研究員)、安房田 智司教授、岐阜大学教育学部 古屋 康則教授
<概要>
本研究グループは、実験室環境と屋外に水槽を設置した野外に近い環境における、メダカの排卵のタイミングを比較しました。各環境において4日間で144匹のメスを調べた結果、野外に近い環境のメダカは、実験室より約3.5時間早く排卵していることが分かりました。
本研究成果は、2026年3月4日に総合科学の国際学術誌「Royal Society Open Science」にオンライン掲載されました。
<ポイント>
実験室環境では、一般的なメダカの飼育条件である人工照明を14時間点灯・10時間消灯、水温を26℃に設定して、メダカを飼育した。野外に近い環境では、メダカの繁殖期初期の5月〜6月に屋外水槽を置いて自然の日照のもとで、実験室環境で用いたものと同じ系統のメダカを飼育した。
各 環境における実験では、オスとメスのペアを水槽に入れ、1時間ごとにメスを取り出し、卵巣を顕微鏡で観察して排卵の有無を確認した。
各環境において4日間で144匹を調べたところ、メスの半数が排卵を完了する時刻は、野外に近い環境では日の出の約4.2時間前、実験室環境では照明点灯の約0.7時間前であった。つまり、野外に近い環境では、実験室より約3.5時間早く排卵していたことが判明した。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O8-RcTs15G2】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O7-07O0FSpA】
図1. 排卵後のメダカの卵
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O9-NR9oYh69】
< 研究の背景>
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O11-v60p8X1E】
図2. 排卵により卵が膜(F)から離れると渦巻き状に密着していた糸(A)がほどける。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202603256272-O13-RaoO862L】
図3. 二つの飼育条件下(赤:実験室、青:野外に近い環境)における排卵していたメスの割合。野外条件では実験室条件と比較して排卵の開始がより早く、実験室条件では3.5時間の遅れが観察された。上部のバーは明期(白)と暗期(黒)を示す。〇の大きさは匹数を表す。
マウスやメダカなどのモデル生物は、実験動物として研究によく使われています。実験室での研究結果の信頼性を高めるためには、その生物の自然環境における行動や生理機能の理解が重要です。実験室での適切な飼育条件の設定、生態に即した実験計画の立案、そして結果の正確な解釈につながるためです。
メダカは日本人にとって身近な魚です。小型で飼育しやすく毎日のように産卵するため、遺伝学や発生学、行動学、医学など幅広い分野で実験動物として活用されています。これまでメダカ研究の多くは、明るさや温度を調整でき、観察しやすいという利点から実験室で行われてきました。一方、自然の中でメダカがどのように生活しているのかについては、ほとんど調べられていませんでした。
メダカの産卵開始時刻は、お腹に卵をつけたメスが観察された時刻や卵の成長段階から推測され、日の出の前後約1時間と考えられてきました。しかし、本研究グループによるこれまでの研究から、野外ではメダカが深夜から産卵行動を開始していることや、実験室と野外環境では求愛や産卵行動の開始時刻に3〜4時間のずれがあることが明らかになってきました(p.3<過去のプレスリリース>を参照)。過去の研究では、行動の観察によるものでしたが、産卵行動の前には排卵(卵巣の中で成熟した卵が体外に出せる状態になる)というメスの生理的な変化が起こります。しかし、この排卵のタイミングも野外と実験室で変化するのかどうかは、分かっていませんでした。
<研究の内容>
本研究では、実験室環境と屋外に水槽を設置した野外に近い環境の二つの条件で、同じ系統のヒメダカを飼育し、排卵のタイミングを比較しました。実験室環境では、人工照明を14時間点灯・10時間消灯、水温を26℃に設定し、実験室でのメダカの一般的な飼育条件にしました。野外に近い環境では、メダカの繁殖期の初期にあたる5月〜6月に屋外に水槽を設置して、自然日照で飼育し、水温は気温に合わせて変動させました(平均22℃、15℃〜28℃)。
産卵が安定して起こるまで各環境で1ヶ月飼育した後、排卵のタイミングを調べました。実験当日にオスとメスのペアを小型水槽に入れ、1時間ごとにメスを取り出し、卵巣を顕微鏡で観察して排卵の有無を調べました。排卵前の卵は膜に包まれていますが、排卵後は膜から外れ、付着糸がほどけて広がります(図2)。各環境で1時間ごとに3匹ずつ、12時間×4日間で144匹のメスを調べました。その結果、メスの半数が排卵を完了する時間は、野外に近い環境では日の出の約4.2時間前、実験室環境では照明点灯の約0.7時間前でした(図3)。つまり、野外に近い環境のメダカは、実験室より約3.5時間早く排卵していたことになります。
本研究では、両環境で同じ系統のメダカを使用したため、排卵のタイミングのずれの原因は飼育環境の違いによるものと考えられます。実験室の人工照明が突然点灯・消灯するのに対し、自然環境では夜明けや夕暮れの明るさが緩やかに変化すること、水温が自然環境では日々変動することなどが、これらのタイミングのずれの原因と考えられます。
<期待される効果・今後の展開>
本研究により、実験室と野外に近い環境におけるメダカの排卵タイミングの違いを示すことができました。実験動物を用いた研究成果を、実験室の結果のみを基に一般化することの課題を具体化した点に意義があります。また、モデル生物における自然環境での基礎的な生態情報を把握することの重要性を改めて示しました。
今後は、実験室と野外環境で行動や排卵のタイミングにずれを生じさせる要因を特定し、それらがどのように排卵タイミングを制御しているかを明らかにしていく必要があります。また、なぜメダカが野外環境では夜間に排卵をするのかという生態学的意義や、環境によって柔軟に排卵のタイミングが変化する仕組みについても調べていきたいと考えています。
<資金情報>
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:JP25K18549、JP24K09051)、公益財団法人 東京動物園協会 野生生物保全基金、公益財団法人 クリタ水・環境科学振興財団(24H083)、公益財団法人 河川財団 河川基金(E250161)の支援を受けて実施しました。
<掲載誌情報>
【発表雑誌】 Royal Society Open Science
【論文名】 Temporal shifts in ovulation between laboratory and semi-natural environments in the model fish medaka
【著者】 Yuki Kondo, Ryotaro Kobayashi, Yuya Kobayashi, Yasunori Koya, Satoshi Awata
【掲載URL】 https://doi.org/10.1098/rsos.251946
<過去のプレスリリース>
「そっと覗いて観ていたら新事実が判明! 野生のメダカは夜明けではなく深夜に産卵を開始する」https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-16261.html
「24時間観察で判明! 屋外でのメダカの繁殖行動は夜中に始まる」
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-18022.html
「実験室と野外環境におけるメダカの繁殖行動開始に、数時間のズレがあると判明」
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-18906.html









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